19歳で出産、夫は覚せい剤で逮捕、そして命を絶った――シンママの「絶望」と「愛」《日本の最貧困地帯 沖縄のリアル②》【神里純平】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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19歳で出産、夫は覚せい剤で逮捕、そして命を絶った――シンママの「絶望」と「愛」《日本の最貧困地帯 沖縄のリアル②》【神里純平】

日本の最貧困地帯 沖縄のリアル②

▲絶望の中にあったひとつの「愛」

日本の最貧困地区と言われる沖縄。そのリアルを個々の事例に踏み込みながら活写する。佐倉まきさんの場合(35歳・那覇市・翻訳者)


「何よりもまず、互いの愛を熱く保ちなさい。愛は多くの罪をおおうものである」(聖書より) 

■19歳で妊娠。夫は16歳だった

 今回紹介する佐倉さんは、那覇の港町近くの県営団地に3人の子供たちと生活をしているシングルマザーである。父親がアメリカ人のハーフの佐倉さんは目鼻立ちがはっきりとしている美人だ。しかし長年の苦労のせいかどこか影を帯びた女性だ。

 佐倉さんとの出会いは、私が勤める会社の英文書類を訳してもらったのが縁である。敬虔なキリスト教徒の佐倉さんは、何度も私を教会に誘ったがそのたびに私ははぐらかしていた。

「俺の子供を産んでほしい」

 知り合って  二ヶ月で佐倉さんは、前の旦那の大輔さんにそう言われた。
大輔さんとの出会いは、那覇市内のクラブだ。いわゆるナンパだった。

 当時の佐倉さんは19歳だった。

 旦那の大輔さんは当時16歳だったが、29歳と年齢を偽っていた。
 そして、その事実を佐倉さんは長女を身ごもった時に初めて知った。

 キリスト教徒だった佐倉さんに堕胎という選択肢は全くなかった。形だけでもと思い佐倉さんが通っている教会の神父にお願いをし、教会でささやかではあるが式を挙げた。

 大輔さんは、がむしゃらに父親の役割を果たそうと精一杯、朝から日がくれるまで肉体労働で頑張っていた。…が所詮は16歳の子供であった。

 念願の第一子の男の子が生まれた時には家庭はもうすでに壊れかけていたのだ。

 原因は、覚せい剤だ。

次のページお金はすべて覚せい剤に消え…

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神里 純平

1979年生まれ。沖縄県在住の会社員。

中堅のリサイクルメーカーにサラリーマンとして勤務し、会社内から出る産業廃棄物の収集運搬やグループ内の在庫移動の業務に従事する毎日。少年の頃には紆余曲折があったが、現在は友人たちと一緒に、仕事後や休みの日に子どもたちに格闘技を指導することがライフワークとなっている。好きな言葉は「人生一生雑巾がけ」。著書に『沖縄裏の歩き方』(彩図社)がある。


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